2025.08.30 ブログ

なぜヒューマンエラーが多いのか?ミスを繰り返す人の傾向と対策

ヒューマンエラーとは

人間の思い込みや見落とし、不注意などによって引き起こされる意図しないミスのことです。あくまでも原因が人間にある場合のミスを指すものであるため、機械トラブルやシステムエラー、マニュアルの誤りによりミスなどはヒューマンエラーには含まれません。

どんなに仕事に精通している人であっても、優秀な人であっても絶対にミスをしないということはあり得ません。

したがって、ヒューマンエラーが起こってしまった場合どのように対処すべきかをあらかじめ考えておくことで、冷静かつ正確に対応することができるようになるはずです。

ヒューマンエラーの種類(1)

過失によるヒューマンエラーには、3種類があります。

スキル不足によるエラー (ミステイク)

一つ目はスキル不足により、本人に故意はないものの、エラーが生じるケースです。 このようなミスを起こさないためにも、監督者は本人のスキルや適性を見極め、適切な業務に振り分ける必要があります。 スキル不足によるエラーは、特にその者が初めてその作業を行う際に起こりやすいエラーです。 業界歴が長いベテランであったとしても、最初の業務開始時は監督者が見守るなど、仕組み化によってミスを減らす工夫を行いましょう。 本人のスキルがしっかり備わっているのか、細かい部分まで確認することで、スキル不足から生じるエラーを限りなくゼロに減らせます。

実行時のミス(スリップ)

二つ目は、スリップによりエラーが生じるケースです。 スリップとは、自分では正しい方法で行おうと思っていたにも関わらず、操作ミス等により誤った方法を行ってしまい、エラーが発生することです。 車を運転していてブレーキを踏もうとしたのに、アクセルを踏んでしまった場合などがスリップの例に該当します。 人間である以上、スリップの発生を100%抑えることは困難ですが、機械の形態・操作性を工夫することで、スリップを限りなく減らすことはできるでしょう。 またスリップは過労や体調不良等による、判断力・集中力の低下によって引き起こされやすいため、定期的な休憩時間を設けるといった対策も大切です。 

記憶違い、注意抜け(ラプス)

三つ目はラプスによりエラーが生じるケースです。ラプスとは、記憶や注意の抜け落ちによって生じるミスを指します。本人は正しい知識や手順を理解しているのに、実行の過程で一部を忘れてしまうことが特徴です。たとえば「作業手順の途中を飛ばす」「確認作業をうっかり忘れる」といったケースがこれに当たります。チェックリストや指差し呼称といった「確認の仕組み」を組み込むことが効果的です。また、作業工程を視覚化したフローや、アラート機能付きのシステムを導入することで、記憶に頼らない仕組みづくりができます。

ヒューマンエラーの種類(2)故意

故意によるヒューマンエラーには、3種類のエラーがあります。

 違反行動

一つ目は規則やルールに違反した行動を故意に行ったことにより、ヒューマンエラーが生じたケースです。 違反行為は規則やルールによって禁止されている行為が実行されたことになるので、当然罰則の対象となります。

手抜き

 二つ目は故意に手抜きをすることで、ヒューマンエラーが生じたケースです。 規定通りの作業を怠る場合や、時間がないために全商品の検査を意図的に行わない場合も手抜きに該当します。 手抜きは上記の違反行為同様、悪質な場合は犯罪にもなり得ます。 もし悪質だったり、同じようなヒューマンエラーが複数回にわたって生じたりしている場合は、社内だけで解決しようとせず、防犯や安全対策のプロに意見を仰ぐのも有効な手段でしょう。

近道行動

 三つ目は楽な方法や最短距離で目的を達成するために行った近道行動が裏目に出て、ヒューマンエラーが生じたケースです。 近道行動はベテラン・初心者問わず、誰しも取りうる行為です。 従業員の近道行動を抑えてヒューマンエラーを防止するには、工程をできるだけ細分化するなど、各業務で従業員の主観的な動きが取りにくい仕組みを作ることが効果的でしょう。

ヒューマンエラーはどのような人に多いのか

続いては、どのような人がヒューマンエラーを起こしやすいのかについてその特徴を具体例を挙げながらご紹介していきます。職場にこのような人がいたら事前の対策をとる必要があるということ、また採用の際には着目すべきポイントとしておさえておくようにしましょう。

1.知識不足の人

どの仕事においても、長く同じ仕事に従事している人とまだ経験や知識が浅い人とでは、後者の方がヒューマンエラーを多く起こしやすいといえます。

新たな仕事に携われば、誰でも始めは知識や経験が不足しているという状況に置かれることでしょう。

本人が積極的に仕事に取り組んで知識や経験を積んでいくほか、周りもしっかりとサポートして特に重要な業務に関してはある程度の経験を積んでから取り組むなどヒューマンエラーがなるべくおこらないような環境の整備は必須だと言えるでしょう。

2.注意力に欠ける人

注意力が散漫である人は、ヒューマンエラーを起こしやすい傾向にあります。また、長時間労働による集中力の低下や単調な作業が続く、モチベーションが下がっているなどさまざまな要因により、通常であればしないようなミスをしてしまうというケースもあります。

3.疲れがたまっている人

通常であれば問題なくこなせているものも、疲れの蓄積により、注意力や判断力が低下して正しい判断ができなくなってしまうというものです。

たとえば、長時間労働が続いており睡眠不足でいつもはできていることが、正しくできていないという状況などが挙げられます。

もし、疲れの原因が長時間労働や労働環境であれば、会社として何らかの対策を講じる必要があるでしょう。

4.ストレスをためやすい人

ストレスの蓄積も、疲れの蓄積と同様にヒューマンエラーをおこしやすくなります。イライラしながら作業をしていると集中力が続かずにミスに繋がる可能性が高くなります。

5.出来ること以上の仕事を引き受けてしまう人

人間は焦ったり追い込まれたりすると、正しい判断ができなくなってしまう場合があります。仕事においては、自分のキャパを超える量のものや、自分では処理しきれないレベルの難しいものを引き受けることがヒューマンエラーの引き金になってしまう可能性があります。

6.自分はできると過信している人

既に経験や知識が十分にある場合、それが過信に繋がってしまいヒューマンエラーを起こすことがあります。「いつもと同じ作業だから」「もう何年もやっていることだから」といってたかをくくって気を抜いてしまうと普段では起こり得ないミスをしてしまうことがあります。

どんなに慣れた作業であったとしても、絶対にミスをしないということはあり得ません。必要なチェックは常に行う必要があります。

心理学から見たヒューマンエラーの多い人の特徴

ヒューマンエラーは単なる「不注意」や「性格の問題」と誤解されがちですが、心理学や認知科学の観点から見ると、人間の認知機能の限界や心理状態の影響が大きく関わっています。ここでは代表的な要因を紹介します。

1.注意資源の限界

人間の注意力は「無限」ではなく、使えるリソースが限られています。
複数の作業を同時に行うマルチタスクや、長時間の集中作業では、この注意資源が枯渇しやすく、見落としや手順の抜け(ラプス)が起こります。例えば、工事現場で作業をしながら電話対応をしており、工具の締め忘れが発生するなどです。

2.ワーキングメモリの制約

ワーキングメモリとは「一時的に頭の中で保持し、処理できる情報の容量」を指します。一般的に成人が同時に正確に扱える情報は7±2項目とされます。
つまり、複雑な手順や大量の指示を一度に処理しようとすると、記憶の漏れや誤操作が発生しやすくなるのです。

3.習慣化と自動化の影響

人間は繰り返す作業を「自動化」し、無意識的に行うようになります。これは効率的ですが、一方で「確認を飛ばす」「思い込みで動く」といったエラーを誘発します。例えば、毎日同じ装置を操作しているため、異常表示を見落とすなどになります。

4.ストレスと感情の影響

心理学では、強いストレス下では思考が「狭窄」し、冷静な判断ができなくなることが知られています。焦りや不安は、判断ミスや手順飛ばしを増やします。
また、モチベーションが低いと「省略癖」や「確認不足」が顕著になります。

5.疲労と睡眠不足

認知心理学の研究では、睡眠不足は反応速度を低下させ、注意の持続時間を大幅に短縮させるとされています。
実際に交通事故や医療現場のエラーの多くは、勤務時間の長さや睡眠不足と強く関連していることが統計的に示されています。

6.ヒューマンファクター

心理学・人間工学の分野では「ヒューマンファクター」という概念が用いられます。
これは、人間の特性(知覚、判断、記憶、感情)が、システムや環境とどのように相互作用してエラーを生むのかを研究するものです。
単なる「人のせい」ではなく、人間が本来持つ弱点に合わせて仕組みを設計することが強調されています。

ヒューマンエラーの対策

続いては、ヒューマンエラーを防ぐためにできることについてご紹介していきます。

1.職場環境の整備

ヒューマンエラーが起こる原因として、長時間労働や仕事におけるストレス、知識や経験不足といったことがあります。

このような原因を一つでもなくすためにできることとして、職場環境の整備が挙げられます。長時間労働に関しては、労働時間を〇〇時間以下に留める、人員を増やす、配置転換により一部に負担がかかりすぎないようにするということができます。

また、仕事におけるストレスに関しては、定期的に社員への聞き取りや相談の場を設けるということもできるでしょう。

知識・経験不足への対処法として、業務に取り組む前に研修を実施したり、一定期間増員して既に経験のある人と一緒に仕事に取り組ませるということなどが考えられます。

社員が働きやすい環境づくりは、ヒューマンエラー対策のみならず、会社として発展していくうえで必須事項だと言えるでしょう。

2.コミュニケーションを大切にする

「わからないことがあっても周りに聞きづらくて自己判断してしまってミスをした」

「手順を間違ってしまったが、報告せずに自分で軌道修正した結果、かえって大きなミスとなってしまった」

「困ったことがあっても相談できる相手がいない」

これらに共通して言えることは、職場におけるコミュニケーション不足です。大抵の仕事は自分一人でおこなうのではなく、チームで完成させるものです。

たとえば、製造業ではそれぞれに担当業務があったとしても、実際にはチームで連携しながら作業を進め完成させていくということになるでしょう。

にもかかわらず、自分の業務にだけ集中して周りに目を向けずに、コミュニケーション不足となってしまうと、周りが困っている状況に気が付けず、自分が困っているときにも助けを求めにくいということになってしまいます。

日頃から職場においてコミュニケーションがしっかりとれている場合、社員同士の情報共有や助け合いによりヒューマンエラーを減らすことにつながります。

3.マニュアルの作成

知識や経験不足の人にとって、マニュアルがあることは手順や進め方を理解するうえで非常に効率的です。わからないことがあるたびに、周りに聞いて確認することが重なると、本人にとっても聞きづらいという状況になってしまいますし、聞かれる側にとっても手を止めて教えることで作業が滞ってしまいます。そのため、マニュアル作成に関しては、出来るだけ要点をおさえて初心者でもわかりやすい内容にすることが求められます。

マニュアルの中には手順以外にも、よくミスが起こりやすいポイントやチェックポイント、これまでに起こったヒューマンエラーを明記しておくことで、事前に対策を行いミスを減らすことに繋がります。

4.ミスが起こってしまった場合の対応の明確化

どんなに対策を取っていたとしても、ヒューマンエラーを100%防ぐことは不可能です。

実際にミスが起こってしまった場合、慌てたり焦ったりしてしまいかえってミスが大きくなってしまうということもあり得ます。

出来る限りミスを最小限で抑え、少しでも冷静に対処するためには実際にヒューマンエラーが起きてしまった場合の対処方法を明確化しておくことが必要になります。

これはマニュアル作成にもつながるものですが、実際に起こったヒューマンエラー以外にも、起こり得るヒューマンエラーを予測して事前に伝達しておくことで、いざというときに冷静に対処することができるでしょう。

5.防犯カメラの設置

防犯カメラを活用することで、より幅広く効率的にヒューマンエラー対策をおこなうことができます。全ての作業を人力で見守っているには限界があるため、防犯カメラで24時間365日体制で管理することで、手抜きや違反行動などを防いだり、何かミスが発生した場合に迅速に対応することが可能になります。

社員の安全管理にも役立つため、防犯カメラの設置はぜひおすすめしたいヒューマンエラー対策の方法だといえます。

明日からできるヒューマンエラー防止策

  • チェックリストの活用
    • 項目ごとに確認を行うことで、手順抜けや二重作業を防ぎます。
  • 集中力を保つ休憩法
    • 50〜90分に一度の短い休憩が効果的です。
  • 睡眠・体調管理
    • 十分な睡眠と栄養は、エラー防止の基礎です。
  • 作業手順の固定化とルーチン化
    • 毎回同じ手順で行うことで、思い込みや抜けを減らします。

ヒューマンエラーを未然に防ぐ仕組み作りが重要

ここまでヒューマンエラーの種類について、発生原因により分類し、項目を紹介しました。 エラーの種類を把握し、適切な対策をとる上での参考になりましたでしょうか。

人が働く以上、ヒューマンエラーを完全に防ぐことは不可能ですが、職場環境の整備やマニュアルの作成、ヒューマンエラーに対する対処法の明確化により大幅にヒューマンエラーを減らせるでしょう。

ヒューマンエラーの防止策として、防犯カメラの設置を挙げましたが、工場や建設現場に特化した防犯カメラ『現場見守る君』を導入するのも有効な選択肢の一つです。『現場見守る君』は電源に挿すだけで使えるため、面倒なネット工事不要で簡単に取り付けられます。 遠隔にいても現場の様子をすぐに把握できるため、万が一ヒューマンエラーが生じた際も素早い対応が行いやすいでしょう。 より高い安全対策が敷かれている職場環境の構築に、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

https://mimamorukun.com/about/
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