建設現場の事故防止策|有効なポイントや三大災害を解説
危険が隣り合わせの建設現場(工事現場)は、労働災害が起こりやすい場所であり、安全な労働環境の維持が必須です。
しかしながら今日でも建設現場における事故は発生しており、いかに事故を減らすかが最重要項目であることは言うまでもありません。
事故が起こってしまった時に「あの時対策をしておけば…」と、どれだけ後悔しても後の祭りです。
後悔をしないためにも、建設現場で起きやすい災害を踏まえ、事故防止策を徹底し、安全安心な職場環境を整えていきましょう。
本記事では建設現場で起きやすい三大災害と、有効な事故防止策を説明します。
建設現場で起きる三大災害とは?
建設現場では、昔から以下3つの災害が多発すると言われています。
- ・墜落・転落災害
- ・建設機械・クレーン等の災害
- ・倒壊・崩壊災害
上記3つの災害は、建設現場における「三大災害」と呼ばれ、事故全体の約7割も占めています。
その中でも「墜落・転落災害」が一番多い災害とされ、全体の約4割を占めています。
最近では建設業に携わる人々の高齢化により、転倒災害や交通労働災害が増加傾向にあります。
これまでの事故防止策に加え、労働者の高齢化に対応する労働環境の整備が急務であると言えるでしょう。
建設現場の事故防止策
建設現場で事故を防止するには、上記「三大災害」をいかに防いでいくかが鍵となります。
そこで今回は、ポイントとなる建設現場の事故防止策を3点紹介します。
日々の安全対策を徹底する
建設現場の事故防止策として、機械や設備等の定期点検を怠らない点が挙げられます。
「三大災害」は、以下のような基本的な措置が不十分であったために生じたケースが少なくありません。
- ・足場の固定が不完全だった
- ・安全帯を不使用のまま作業を行った
- ・作業開始前の点検を怠っていた
- ・用途外の方法で使用した
- ・ヘルメット未装着で作業していた
このような基本的な事項は基本的であるからこそ、毎日繰り返していると、中途半端になりやすい部分でもあります。
しかし基本的であるからこそ、毎日しっかりと行えているのか、徹底した確認を行い作業を始めるようにしましょう。
転落や飛来物防止に対する防止策を整えておく
万が一に備え、転落や飛来物防止に対する防止策を整えておくのも有効です。
もちろん転落や飛来物自体を防止する策を講じるのは言うまでもありません。
しかし、もしもこのような事態が生じた際に、事前に防止策を講じておくことで、事故のダメージを可能な限り減らせるため、二次災害防止にもつながります。
安全作業の基本は愚直に守ること
安全作業の基本は決められたことを愚直に守ることです。ルールを愚直に守るためには、次の3ステップが必要になります。
- ・ルールを正しく覚えること
- ・ルールの背景を理解すること
- ・どのような場合にもルールを守ること
安全に関するルールは、これまでの事故や災害を教訓にして作られてきたものです。そのため、まずはルールを正しく覚えることが大切なのです。「覚える」と言っても学校の勉強のように暗記するわけではありません。現場に出たとき、自然にルールを守れるように体で覚えるのです。ルールを守ることそのものが目的なのではなく、所定の状態(目標)になるまで決められた時間内で作業するのが目的なのです。そのため、体が自然にルールを覚えているという状態にならないと、なかなか安全に作業できないでしょう。
次にルールの背景を理解することも大切です。たとえば、夏の暑い時期であればヘルメットを脱ぎたくなるのは、人として当たり前に感じることでしょう。しかし、ヘルメットを脱いで作業していると最悪の場合どうなるか?これを理解していると、ヘルメットを脱ぐという発想にはならないのです。
背景を理解している人なら、「ヘルメットを被っていると暑い⇒ヘルメットを脱げばいい」という短絡的な考えではなく「ヘルメットを被っていると暑い⇒でも、ヘルメットは必要⇒ヘルメットを被りながら体を冷却するにはどうすればよいか?」という安全で建設的な考え方になります。ヘルメットを被る目的は頭部を守ることです。「頭部を守る」という目的、あるいは本質を無にすることなく問題を解決する力(考え方)を身に着けましょう。
最後に、どのような場合でもルールを守ることも大切になります。ルールさえ守っていれば安全に作業できる訳ではありませんが、ルールを守ることで災害のリスクを一定程度まで下げられるようになります。
しかし、中にはルールを守りづらい状況や、ルールを守ると著しく作業効率を落とすことになるような状況もあるでしょう。このようなとき、自分の考えだけで勝手にルールを破るのではなく、作業を中断して管理監督者に相談するなど、冷静かつ安全な対応が必要になります。もしかすると、同じような状況で困っている同僚がいるかもしれません。あなたが声をあげることで、現場作業員全員が助かることもあるのです。
管理監督者の性格や仕事のスタイルにもよりますが、何か困ったことがあったときはこまめにコミュニケーションを取れる体制にしておくと、結果的に安全につながるかもしれません。
従業員のストレスマネジメント等を行う
最近では長時間労働や、パワハラ等のストレスによる精神障害に悩む従業員が増えています。
特に建設現場は体が資本の仕事であるからこそ、ちょっとした体調不良が大事故につながりやすい恐れがあります。
建設業や工場などは重労働で休みが少なく、人の入れ替わりも激しい会社も多いため、ストレスがかかりやすい仕事環境だと言えます。
こうしたストレスフルな環境だからこそ、管理職や経営者はより現場で働く従業員の体調やストレス管理に気を配る必要があります。
ヒヤリ・ハットとは何か?
作業をしていて「結果的にケガしなかったけど、危ない思いをした」ということはないでしょうか?たとえば、重量物を運んでいるときに手が滑って落としてしまい足の上に落としそうになったとか、立てかけていた長尺の資材が倒れてきたとか、ということがあると思います。このような減少を「ヒヤリ・ハット」といいます。
ヒヤリ・ハットとハインリッヒの法則
1:29:300というハインリッヒの法則があります。これは「1件の重大災害の背景に29件の軽傷事故があり、その背景に300件の無傷事故(ヒヤリ・ハット)がある」というものです。ちなみに、重大事故は言うまでもありませんが、軽傷事故も立派な労働災害です。ひとたび労働災害が起これば本人がケガすることはもちろんですが、原因究明と対策立案(恒久対策)、恒久対策が完了するまでの暫定対策立案と実行、休業災害となった場合の人員調整など、多くのリソースを取られることになってしまいます。各作業員の業務もそうですが、会社としての事業そのものに影響が出てしまうのです。
ヒヤリ・ハット活動とは?
ヒヤリ・ハットはまさに労働災害の前兆です。これをただの前兆で終わらさず、重大事故はもちろんのこと、軽傷事故を防止するために活かすのがヒヤリ・ハット活動です。
ヒヤリハット活動では、自信が体験したヒヤリ・ハットをもとに、次のようなこと思い出したり検討したりします。
- ・ヒヤリ・ハットが起こった日時と場所
- ・ヒヤリ・ハットが起こったときにしていた作業
- ・ヒヤリ・ハットの内容
- ・今回のヒヤリ・ハットを防止する対策
日時や場所、作業はあとでヒヤリ・ハットを分類するときに大切な情報となります。曖昧に書くのではなく、後で読んでも内容が分かるように、かつ正しい情報を記載するようにしましょう。
ヒヤリ・ハットの内容は詳細に書きましょう。どのような状態で、どのような作業をしていて、何が起こったのか?正確かつ詳細に記載することが大切です。そして、自ら対策を考えることも、安全化に向けた視点を持つうえで大切なのです。
対策に記載する内容としては、確実に防げるハード面の対策もよいですが、そういった対策には費用の問題もあり、導入までに時間がかかるものもあります。そのため、自動車の運転で言う「かもしれない運転」のように、意識面の対策(改善案=ソフト面の対策)を考えることも大切です。そういった対策であれば、お金も時間もかけずに実行できます。
ただし、こういった対策は安全ルールと似たような性質を持ち、安全を担保するには、全員がそれを守ることが必要となります。まずはソフト面の対策を実行し、必要であれば費用面などを十分考慮したうえで、ハード面の対策を取るのがよいでしょう。
ヒヤリ・ハット活動では作業員が報告しやすい仕組みを作るのも必要です。終礼のときに全員の前で発表するのでは、報告しづらい場合もあるでしょう。また、口頭の報告ではうまく報告できなかったり、報告の事実や内容が後に残らないというデメリットもあります。どのような報告方法がよいのか、各職場の作業員の特性に合わせて検討するとよいでしょう。
リスクアセスメントとは?
ヒヤリ・ハット活動はヒヤリ・ハットが起こってから行うものです。しかし、事前に行える活動もあります。それがリスクアセスメントです。リスクアセスメントとは、作業の危険度合いを定義し、どのような対策を行えばリスクレベル(リスクポイント)を下げられるか検討することをいいます。
たとえば、重量物を運ぶ作業があったとしましょう。このとき、①リスクが発生する頻度、②リスクが発生したときに負傷又は疫病になる可能性、③そして負傷又は疫病の重篤度を点数化して合計するのです(※1)。①〜③の項目を点数を表1〜表3に示します。
表1.リスクが発生する頻度
頻度 | 点数 | 内容の目安 |
頻繁 | 4 | 1日に1回程度 |
時々 | 2 | 週に1回程度 |
ほとんどない | 1 | 半年に1回程度 |
表2.リスクが発生したときに負傷又は疫病になる可能性
可能性 | 点数 | 内容の目安 | |
危険検知の可能性 | 危険回避の可能性 | ||
確実である | 6 | 事故が発生するまでの危険を検知する手段がない | 危険に気がついた時点では、回避できない |
可能性が高い | 4 | 十分な注意を払っていなければ危険がわからない | 専門的な訓練を受けていなければ回避の可能性が低い |
可能性がある | 2 | 危険性又は有害性に注目していれば危険が把握できる | 回避手段を知っていれば十分に危険が回避できる |
ほとんどない | 1 | 容易に危険が検知できる | 危険に気がつけば、けがをせずに危険が回避できる |
表3.負傷又は疫病の重篤度
重篤度 | 点数 | 災害の程度・内容の目安 |
致命傷 | 10 | 死亡や永久的労働不能につながるけがや傷害が残るけが |
重症 | 6 | 休業災害(完治可能なけが) |
軽症 | 3 | 不休災害(医師による措置が必要なけが) |
軽微 | 1 | 手当後、直ちに元の作業に戻れる軽微なけが |
以上3項目の点数を合計してリスクポイントを算出します。リスクポイントによって表4のようにリスクの優先度を決めます。
表4.リスクの優先度
リスク | 点数 (リスクポイント) |
優先度 | 取扱基準 |
Ⅳ | 12〜20 | 直ちに解決すべき問題がある | 直ちに中止または改善する |
Ⅲ | 9〜11 | 重大な問題がある | 早急な改善が必要 |
Ⅱ | 6〜8 | 多少問題がある | 改善が必要 |
Ⅰ | 5以下 | 必要に応じて低減措置を実施すべきリスク | 残っているリスクに応じて教育や人材配置をする |
※1:厚生労働省「リスクアセスメント」
遠隔カメラの有効性
事故を未然に防ぐため、遠隔で使える監視カメラを導入している企業が増えてきています。
詳しくは、遠隔で使える監視カメラについて解説しているこちらの記事をご参照ください。
建設現場の事故を防止しよう
ここまで建設現場で起きやすい三大災害と、有効な事故防止策を説明しました。
建設現場における事故防止策を考えるうえで参考になりましたでしょうか。
危険が隣り合わせな建設現場は、労働災害が起こりやすい場所であり、いかに安全な職場環境を維持するかが非常に重要です。
建設現場の事故防止策として、工場等に特化した防犯カメラ『現場見守る君』の導入も有効な方法です。
『現場見守る君』では、設置時に防犯設備士から設置場所や機種選定のアドバイスが受けられるため、建設現場でより精度の高い事故防止対策が行えます。
ネット環境で必要な時にレンタルができる商品ですので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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