河川や道路などの災害対策につながる理由
埼玉県ふじみ野市 都市政策部
過去の内水浸水の経験を踏まえての備え
様々な場所に導入されている『現場見守る君』だが、建設現場に次いで導入が多いのが自治体だ。近年、自然災害による被害が増加するなか、河川や道路などの管理ツールとして採用が増えている。今回は自治体の導入事例として、ふじみ野市都市政策部道路課道路建設・維持係の菊池氏と風間氏にお話を伺った。
ふじみ野市は、一級河川新河岸川に接して位置しており、これまで著しい市街化が拡大してきたことで、降雨時において地表の表面流水が増加し、道路冠水への対策の必要性が高まっているという。「平成29年台風第21号」及び「令和元年東日本台風」の豪雨の際には、同市内で内水浸水が発生したため、いち早く道路冠水のおそれのある複数の場所をリアルタイムで把握することが課題となっていた。
画像の見やすさ、操作性が導入のポイント
このような課題を克服する一環として同市が導入した設備が『現場見守る君』だ。平成30年に下水道施設で導入を開始し、令和5年からは道路施設でも導入を開始している。導入のポイントについて同氏にお話を伺った。 同氏「画像の見やすさ、操作性の分かりやすさで『現場見守る君』を選びました。レンズを動かして見たい所を見ることができる上に、構造がシンプルで非常に扱いやすいです。リース対応もしていて適切なメンテナンスサービスを受けられるほか、リース価格が低廉で複数箇所に設置いたしました。
職員はスマートフォンに専用のアプリケーションをインストールすれば外出時や夜間などにもリアルタイムで現地の状況をモニタリングできるので、非常に使い勝手が良いです」。現在は道路施設 (国道下のアンダーパスや鉄道下の道路)及び下水道施設(調整池やポンプ施設など)の合計14箇所に設置し、設置期間は出水期の5月から11月までの7カ月間リース契約として利用している。これと併用して、複数台のタブレット端末も使用しており、都市政策部のほか防災担当部署でも使用可能としているため関係部署間での情報共有を図り連携強化に努めている。
スマートフォン表示における確認画面
タブレット表示における確認画面
カメラと人の棲み分けで業務の効率化に貢献
『現場見守る君』の導入によりふじみ野市では道路冠水のおそれのある複数の場所を同時でモニタリングできることとなったため業務の効率化が改善されたという。「道路冠水のおそれのある複数の場所を気象情報などと照らし合わせながら同時に監視することができるようになりました。排水ポンプ車の稼働は慣れた職員でも準備等に相応の時間を要するため『現場見守る君』でモニタリングしながら最適なタイミングを図ることにも役立てています。限られた職員数で効率よく現地の状況を遠隔からモニタリングできる『現場見守る君』の役割は重 要 で、道 路 冠 水の 危 険の高まった場所を重点に人数をかけて対応し、それ以外の場所はカメラを用いてモニタリングするなどといったメリハリを付けた業務に尽力できるようになりました。以前に比べて現場に従事する職員の数は 限られてきているので、こうしたツールを積極的に使い業務の効率化を推進していければよいと考えます」。 カメラの画像を確認することで危険度の高低に応じて柔軟に職員を配置して対応することにより業務を効率的に運営できるほか、的確なタイミングで現場対応ができるようになったという。こういった視点から監視カメラ導入による業務運営の効率化とともに、道路施設等の安全性を高める意味でも効果的といえよう。
未来の災害対策にもつながる画像データの蓄積
実はカメラ画像で役立つのは、リアルタイムの動画だけではない。ふじみ野市では、以下のように記録としての画像データの重要性も感じているようだ。同氏「録画された画像データが、後で道路冠水の発生状況などを検証をする際に非常に役立つことがあります。浸水シミュレーションでも理論的な浸水エリアを想定できますが、実態とは誤差が発生することが多々あります。その誤差を修正するためにこうした実績 データは重要です。また、画像データは様々な場面において重要な証拠資料ともなりえます」。 近年の気象変化により、過去の常識が通用しない自然災害が増えている。しかしこうした変化を日々のデータとして蓄積・検証していくことで、新たな対応策も見えてくる可能性がある。その意味で監視カメラは、現在だけでなく未来の災害対策にも確実につながっていくはずだ。
【引用元『資材・工法データシート 2024年版』(株式会社 建設物価サービス 発行)】